学校の先生には見えない『いじめ』にひそむ発達性運動協調障害(DCD)

例えば、自閉スペクトラム症の疑いがある子どもが、極端に運動が苦手な場合、体育の時間が苦痛であるのは想像に難しくありません。

走ることだけでなく、体育の授業全般が苦手なA君の場合

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コミュニケーションが苦手という特徴のある自閉スペクトラム症の子どもは、物事に対する反応が遅く、おとなしいので、日頃から無視をされたり、からかわれたりすることが多くなる傾向にあります。

仮に『A君』としておきますね。

A君は走ることだけでなく、体育の授業全般が苦手な子です。

リレーで、フラフラと走るその姿は、まるで、やる気がないようにも見えます。

団結力のあるクラスですから、他の子が走るときと同じようにA君が走るときにも、みんなから声援が沸き起こりました。しかし、ちらほら罵声も混じり始めます。

罵声は、リレーで真剣に勝ちたいと思っている子たちでした。

体育の授業とはいえ、勝ち負けに真剣にこだわる子もいて、負けて悔し涙を流す子もいます。

そのような子たちからしてみれば、やる気のないA君は迷惑な存在でしかありません。

子どもどうしのことだから、熱くなるのは仕方がない……と先生も多少の罵声には目をつむります。

A君は、本当に、やる気がないのでしょうか?

発達性協調運動障害(DCD)について

発達性協調運動障害(DCD)と呼ばれる中枢神経の症状をご存知ですか?

普通に歩いたり、走ったりすることはできるのに、リレーやチームワークを必要とするボール競技などになるとぎこちない足運びになってしまう子……一見、やる気がないように見えることもありまが、

ただの不器用でもやる気がないわけでもなく、中枢神経の発達障害の一つで、複数の運動を協調させる能力が極端に低いのです。

例えば、走ること、止まっているボールを蹴ることはできます。

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しかし、サッカーのようにチームワークを必要とし、常に移動するボールを目で追いながら、自分も走り、移動するボールを蹴ると複数の動作を必要する運動ができないのです。

そこに、他の子の動きも絡んでくるとなると、固まって動けなくなってしまうのです。

心ここにあらずの状態でも、他の子どもの真似をして、一応は走ってついていきます。

不登校になる子ども~思春期と自閉スペクトラム症(ASD)~

本人の努力や根性ではどうにもならないことをみんなの前でからかわれたり、怒鳴られたりするのは、気持ちのいいものではありません。

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嫌でたまらない体育の授業も、おとなしくて根が真面目なA君は一応は出席しますが、毎回が心折れる時間でした。

そんな辛い思いをしたあとに、クラスメイトの一人がこそっと、A君の耳元でささやきます。

『おまえ、遅いからリレーに出るなよ』

思春期と自閉スペクトラム症(ASD)

思春期を乗り越えるのは定型発達の子どもでも大変です。

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しかし、もともと自己調整や周囲との調整に苦労している発達障がいの子どもがこの時期を乗り越えるのはさらに大変です。

発達障害の診断を受けずに成長してきた子どもでも、思春期の問題行動により症状が表面化するケースもあります。

少しでもその症状や家族からの情報提供がある場合は、子どもどうしの揉め事のあとのケアも『子ども同士だから色々あると思います』で片づけず、慎重にしていただくことで、極端なひきこもりや社会的交流から退却してしまう子どもたちを減らすことにつながるのではないでしょうか。

学校の先生には見えない『いじめ』にひそむ発達性運動協調障害(DCD)

『つけられたレッテル たった一枚でも はがすのは難しい』は、A君がつくった標語です。

A君は体育の授業が終わっても学校にいる間、ずっと、からかわれていた可能性があります。

大人の気づかないところで、イジメは起こります。

子どもたちの間ではイジメと認識されていないかもしれません。

誰も悪くありませんが、『イジメ』に相当するほどの心のダメージに苦しんでいる子どもがいるのは確かです。

その後、A君は、徐々に学校を休みがちになりました。

そして、不登校になる前に『I want to~を使った文をつくりなさい』という英語テストの答えに「I want to know how to kill classmates.」(僕はクラスメイトをコ〇ス方法を知りたい)と書き、先生たちの間で、問題になりました。

先生や親に理由を問われましたが、「何もない」とA君は言いました。

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『学校は楽しい。不満はない』と無表情でA君は言いますが、本当に何もなかったといえるのでしょうか。

そして、A君は不登校になりました。

『時々言い争いもあるけど、良い仲間に恵まれているように見えましたよ』と担任の先生は言います。

適当にやっているわけでも、やる気がないわけでもなく、努力や気合ではどうにもならない状況に陥入り困っているにも関わらず、周囲から足りない部分を指摘され、馬鹿にされ、からかわれ……、A君は徐々に自信を喪失していったのではないでしょうか。

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自閉スペクトラム症やDCDの知識を持っていれば、体育の授業中やその後に少しでも適切なケアができたのではないかなと思います。

自閉スペクトラム症と二次障害

自分の気持ちを言葉にすることが苦手な自閉スペクトラム症(ASD)の子は、学年があがるとともに、二次障害を併発する可能性が高くなります。

それは、幼少期から発達障がいの特徴が明確に出ている子どもよりも、症状が軽度なグレーゾーンの子どもたちに多いような気がします。もちろん、全ての子どもがそうではありませんが……。

適切なケアのない状況で心が折れるような経験を積み重ねてしまった結果といえるような気がします。

発達性協調運動障害(DCD)の対応の仕方

自閉スペクトラム症(ASD)は、コミュニケーションの発達に問題があるのが特徴です。

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多くは、自分の辛さを周囲に伝えることができず、困っていないように見えて、実は困っていることもたくさんあるのです。

自閉スペクトラム症の症状の一つでもある発達性協調運動障害(DCD)は、中枢神経の問題なので、気合いや根性では改善せず、的確なアセスメントと支援を必要とします。

苦手な運動部位の分析を行い、大人が子どもと一緒にその子のやりやすい方法を模索し、少しずつ苦手さを軽減していくようにする方法がいいでしょう。

努力の無理強いは苦手意識を増やすだけなのでよくありません。

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・「注意欠如・多動症(ADHD)

・「自閉スペクトラム症(ASD)

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